今回は、アニメ『「ルックバック』です。
映画館を逃した作品が、早くもAmazonプライムビデオで無料視聴ができるということで、拝聴致しました。
映画『ゴジラ-1.0』に続き、最近アマプラですぐに最新作が見えるのはありがたいことですね。
アニメ『「ルックバック』は『チェンソーマン』の作者 藤本タツキ先生の短編漫画「ルックバック」の映画化でございます。
ネタバレは基本無しですが、若干のネタバレが含まれる場合ございます。
作品を見を終わったときに読んでいただけるとより共感できる部分が多いかと思います。
アニメルックバックの予告編とストーリー
ストーリー
学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。
しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる。
漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野。二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった。しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起きる…。
二人の巨人が織りなす漫画とアニメの共演
「漫画が動いていた」
それがこの作品の一番の感想といっても良いかもしれません。
タツキ先生の漫画自体、アニメ化するにあたり制作する「絵コンテ」にお越しやすい印象もありますが、「漫画がそのまま動いた」という印象が強い作品でした。
劇場版「ルックバック」のアニメーションでは、監督の押山清高さんの担当作品「グレンラガン」「スペース☆ダンディ」の突破力も垣間見えました。
物語の冒頭は、視聴者を惹きつける押山監督の演出が冴えていたと思います。
大袈裟ともいえるアニメーションが映画全体の「静」の美しさをより際立たせたと思います。
漫画では、表現が細やかだった部分がアニメーションに起こす中で、より情緒豊かに描かれていました。
キャラクターから匂いすら感じさせる息遣い
キャラクターから匂いが感じられるとそれは良作だと思います。
「東京ゴッドファーザーズ」今敏監督もしかり、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」石立太一監督、実写映画だと、是枝監督の作品などは、これに該当するのではないでしょうか。
あくまでもフィクション、されど私たちの身近に確かにあったあのシーンの扉を開いてくるのです。
それは、家庭内でのたわいもない一言、街の風景の中、時には流れてくるニュース映像の中、あの日を思い出させてくるのです。
この作品も、そんな私たちの現実の1シーンを思い出させる作品だったと思います。
タツキ先生の構図が神ががかっていた!アニメ版ではさらに高みへ
チェーンソーマンも然り、「静と動」の緩急がうまい作家であることは、間違いありまえんが、今回のルックバックで抜きにでて素晴らしいのが、「静」の美しさかと思います。
特に、主人公「藤野」の漫画を書いているシーンのバックショットが全てを物語っているといって良いでしょう。
小学生時代の子供部屋のシーンでは、丸椅子に腰掛けながら作業を進めていますが、丸椅子をで背中を大きく見せることでキャラクターの背中の演技や足元の演技をシンプルに描きやすくしています。
アニメで加えられる机の上の鏡もあざとくキャラクターの表情を返してきていました。
大人になって描かれる漫画を描くシーンもそれと近いです。
窓に映り込む、風景が漫画を描く室内の閉塞感を緩和して、さらに窓の外に風景とガラスの映り込みで、作品を見る私たちを前向きな方向えと誘導しています。
大人になってからのシーンでは、漫画ではバランスボールだったものが、メッシュのビジネスチェアに変わっています。
背もたれを横にスライドさせた構図を見る限り背中の演技を大切にしたことが伝わってきました。
計算され尽くされた「構図」が光まくっていたと思います。
チェーンソーマンでも見られる多くを語らない演出
近年のドラマの演出も人気のアニメ「鬼滅の刃」を見てもそうですが、セリフと演技でキャラクターの心情を表現する方法がとても増えてきました。
タツキ先生の演出アプローチは、まさにその逆だといえます。
たっぷりと時間をとって演技と背景で伝えてくるのです。
京本の廊下に積み上げられたスケッチブックの量もしかり、4コマ漫画の画力もしかり、キャラクターが積み上げてきた時間を伝えてきていました。
「ルックバック」は、漫画版の「ニュー・シネマ・パラダイス」
「ルックバック」の内容を簡単に言えば、「漫画に翻弄され、漫画によって生かされる2人の物語」です。
「映画に翻弄され、映画によって生かされる2人の物語」を描いた「ニュー・シネマ・パラダイス」に近いシナリオラインだった様に思えます。
名作映画ランキングで常に上位にランクインしてくるこの映画を漫画に置き換えて、フィルムを4コマ漫画へと変えていく。
重要な共通点は、「アイを還す」という演出。
4コマ漫画をシンプルに扉の隙間から通す所は、ウマイと思ってしましました。
引きこもりから漫画によって救われた京本が、また藤野の背中を押すところ(漫画アイを京本が藤野に還すシーン)が「漫画アイがあるよね」っと思ってしまいましね。
漫画も映画も好きな私にとってはルックバックもニュー・シネマ・パラダイスも大切な作品ですけれど。
私たちは、未来に歩みを進めていくが
星の数ほど、「物語」は生産され消費されていく昨今、時間を巻き戻したり、世界線を超え、同じだけど違う世界へなど、新しい表現手法が発明され、物語の中で自由は、無限大に膨張しています。
その中で作中、「大切な人の死」を事象ごと消し去ることも出来たワケだけれどそれは行われませんでした。
この作品に登場する様な理不尽な事件は日々テレビのニュースから流れてきます。
この様な事件がこの作品のリアリティーと言えるのだが、私たちは、悲しいかな現実として受け入れてしまっています。
この作品は、その理不尽からの微かな救いを「漫画」という世界に見出したのだと思います。
「look back」には、いくつかの意味があります。
look back = 振り返る・見返す・顧みる
直訳すれば「背中を見ろ!」
その名の通り背中を見せられた作品でした。
EDのバックショットは、京本の視点だったのか?とも思ってしまいました。
現実は理不尽で、未来にかなず終わりは来るけれど、それに向かって歩き出す力を与えてくれる作品の一つかもしれません。
アニメ『「ルックバック』 主題歌 ED曲
主題歌
「Light song」by haruka nakamura うた : urara
アニメ『「ルックバック』 キャスト・声優
藤野 声:河合優実
京本 声:吉田美月喜
アニメ『「ルックバック』 スタッフ
原作
藤本タツキ「ルックバック」(集英社ジャンプコミックス刊)
監督・脚本・キャラクターデザイン
押山清高
美術監督
さめしまきよし
美術監督補佐
針﨑義士・大森崇
色彩設計
楠本麻耶
撮影監督
出水田和人
編集
廣瀬清志
音響監督
木村絵理子
音楽
haruka nakamura
主題歌
「Light song」by haruka nakamura うた : urara
アニメーション制作
スタジオドリアン